こんにちは獣医師の阿波です。

暑さと湿気が高くこれからの季節人間も動物も熱中症が非常に多くなっておりますので、エアコンや日除け、こまめな水分補給等対策を十分にされてください。

また、短頭種や肥満の子は熱中症リスクが高くなりますので十分ご注意ください。ダイエットは今からでも遅くありません。気になる方はご相談ください。

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今回は心臓のお話ですが少し長くなります。

以前から心雑音(心臓の雑音)を指摘されていてまだ心臓の検査をしたことがない、未治療のわんちゃんは必見です。

もちろん心雑音が聞こえる子はみんな治療が必要というわけではありません。

心雑音のレベルも6段階あり、中でも3段階以上になると治療が必要になることが多いです。その場合はしっかりとした心臓の検査を行いどういったお薬が必要かを詳しくみていきます。

 

若齢の場合先天的な心疾患の可能性が高くなりますが、中~高齢の場合弁膜性心疾患、肺高血圧症、心筋症、フィラリア症などが考えられますが、中でも僧帽弁閉鎖不全症という弁膜性心疾患がわんちゃんでは発生が多いです。

小型犬種で特に好発しますが、欧米で古くから報告されている好発犬種にはトイ・プードル、ミニチュア・プードル、ミニチュア・シュナウザー、ポメラニアン、チワワ、コッカースパニエル、ペキニーズ、フォックス・テリア、ボストン・テリアがあげられます。

また、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは好発犬種であり、比較的若齢から発生し、年齢の増加とともに急速に進行することがあります。

大型犬種ではドーベルマン・ピンシャーが発生リスクが高いといわれています。

 

日本では人気犬種が欧米とは違いますので、発生が多い犬種としてはチワワ、トイ・プードル、シー・ズー、ヨークシャー・テリアなどがあげられます。

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この僧帽弁閉鎖不全症の原因は房室弁の粘液腫様変性が多く、2009年にはアメリカ獣医内科学学会によってその診断・治療ガイドラインが発表され、新しく心不全分類(ステージ分類)が発表されました。

ステージはおおまかにA,B,C,Dに分類されこの順に重症度が高くなります。中でもステージBはB1とB2に分類されますが、B2の症例における治療の必要性や治療薬の種類に関しては様々な議論がなされてきたようです。

ステージB2とは、心雑音が聴取され心拡大も認められるが、うっ血性心不全による臨床徴候が認められない段階となります。

 

今年の6月にあった講習会で特にこのステージB2における治療の選択肢に関して、新しい情報が得られましたのでお伝えします。

ステージB2に分類される症例の中で、複数の基準(左心房拡大、左心室拡大、X線による心拡大)を満たしている場合、ピモベンダンというお薬を投薬してあげることにより、うっ血性心不全が発症するまでの期間を約15か月も延長できる可能性があります。

下にそのデータを掲載します↓

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Effect of Pimobendan in Dogs with Preclinical Myxomatous Mitral Valve Disease and Cardiomegaly: The EPIC Study-A Randomized Clinical Trial.

ぱっと見てもなかなか分かりにくいと思いますが、、、

ざっくりお話しますと、ピモベンダンを投与した群(178頭)と投与してない群(176頭)の間で50%の症例が肺水腫や心不全を発症したりそれによって亡くなってしまうまでの期間の差が約15カ月の差があり、有意差が認められているということになります。

この試験でのピモベンダン製剤はベーリンガーインゲルハイム社のベトメディンが使用されています。

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もう少しざっくりお話しますと、、、

ステージB2は症状が無いのですが、レントゲン検査エコー検査を行うことでその中でも心拡大が進行している症例を発見できます。

そしてその子たちにピモベンダンを投薬してあげることで、肺水腫やそれによって命を落としてしまうまでの期間を平均で15カ月延長できる可能性があるということです。

 

これは大きな発見であり、今までに無かった選択肢となります。

心臓の弁膜症というものは少しずつ進行していきますし、急に悪くなることがあります。また、症状が進行すればするほど治療が難しくなります。

そのため今の心臓の状態をしっかりと把握し、その状態に合わせた適切な治療が必要となります。出来るだけ長くその子の心臓が頑張っていけるように早めの検査をおすすめします。

ご相談お待ちしております。

 

 

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