こんにちは獣医師の阿波です。

健康診断に行くと気になるのが血圧です。自分の場合、血圧を測定する際には深呼吸をして交感神経を落ち着かせ計測します。それでも引っかかってしまうことは多々あるのではないかと思います。

皆様の血圧はいかがでしょうか?

今回は猫の高血圧についてですが、まずは人間と比較してみましょう。

 

人間の高血圧の診断基準は収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上(140/90mmHg以上)といわれています。

また、高血圧には種類があり

①本態性高血圧・・・はっきりした原因のわからない高血圧

②二次性高血圧・・・腎臓、心臓、血管や内分泌の異常などが原因

日本人の場合、約90%が①本態性高血圧といわれています。ただ、もともと高血圧になる素因のある方は生活習慣の影響から高血圧になることもあります。

人間では高血圧を放っておくと怖い病気のリスクが高くなります。例えば脳出血、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、大動脈解離、腎機能障害などがあげられます。

 

一方、猫の高血圧の診断基準は収縮期血圧が160mmHg以上が治療が必要な高血圧とされています。

原因は人間と違い、ほとんどが二次性高血圧であるといわれています。ただし、猫の場合は興奮やストレス(例えば白衣症候群)のように人為的な要因で血圧が上昇してしまうこともあるので注意が必要です。

症状は大きく4つに分けられます。

  1. 視覚系・・・急性の失明(網膜剥離、網膜浮腫、網膜出血)→瞳孔反射が欠如し散瞳
  2. 心血管系・・・心臓の肥大、胸水の貯留
  3. 腎臓系・・・高血圧も腎疾患を進行させる(腎疾患により高血圧が起こることもある)
  4. 脳血管系・・・見当識障害、不全麻痺、痙攣

下に視覚系の症状が現れた猫ちゃんの写真をあげます

 

左と右上の写真は左目が網膜剥離と前房まで及ぶ眼底出血を起こしています。

右下の写真は瞳孔反射が欠如し散瞳しています。

いずれの症例も収縮期血圧は180mmHgを超えており、即座に治療が必要なレベルでした。

ここまでなれば飼い主様も気づかれると思いますが、高血圧は徐々に進行するので初期の段階ではわからないことがほとんどです。

 

もし、病院でも比較的落ち着いて計測できそうなら健康なうちから血圧を測定してみるのも一つだと思います。

健康診断の際にご相談ください。