こんにちは獣医師の阿波です。
朝晩は吐息が白くなり、冬将軍の到来もあって気温がぐっと下がりましたね。
急な冷え込みで体調を崩されないようお体お気を付けください。
ヒトの方では、この時期になるとインフルエンザが流行します。今年はワクチンが不足している地域もあり対策が大変です。
インフルエンザの流行地のチェックをおすすめします。
ネコちゃんの場合、冬になると発生率が高くなる印象のある病気として尿石症があります。
今回は尿石症の概要と対策をまとめてみますので、参考にされてください。
- 尿石症とは
尿石症は、尿路系に形成された結石や結晶が局所粘膜の炎症を起こしたり、尿路閉塞を起こす疾患です。
尿石の存在する場所によって、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石に区別されます。
この中で比較的多くみられる膀胱、尿道結石は猫の下部尿路疾患FLUTDに含まれます。
- 尿石の種類・・・
多くはストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)やシュウ酸カルシウムで占められます。
比較的若いうちはストルバイト、年齢が進めばシュウ酸カルシウムがやや多くなる傾向があります。
それ以外に尿酸アンモニウム、リン酸カルシウム、シスチンなどがあげられ、他にもシリカ、キサンチンなどのまれな結石や、複合型の尿路結石もあります。
尿酸アンモニウムはシャムやエジプシャンマウで品種的な素因が認められています。
また、結石ではなくても炎症産物が尿路閉塞を起こす場合もあります。
(参照:Dr.Jody P.Lulich-Hill’s Scientific Seminar、Veterinary Focus.Vol17.No1.2007)
- 原因は・・・
尿石が形成される要因はいくつかあります。
①尿の塩濃度、尿pH、尿の停留時間・・・飲水不足や脱水によって濃縮された尿が長く停留すると結晶の形成が促進されます。特に冬場の飲水量低下により、尿石素因を持っているネコちゃんは尿石症のリスクが高くなりますので対策が必要です。
②食物中の無機質濃度の不均衡・・・食べ物に含まれるミネラル成分の不均衡は尿石形成を促進します。
③尿石核の存在・・・脱落した粘膜上皮や壊死組織片は尿石の核となります。ビタミンA欠乏や膀胱炎の存在があると尿石核形成を助長します。
④尿路感染・・・尿路の炎症によって脱落粘膜上皮が増加するとともに、ウレアーゼ産生菌(バイ菌の種類)が増加すると尿のpHが上昇し、アルカリ尿となりストルバイトなどが形成されやすくなります。
⑤結晶化抑制因子の減少・・・尿中のクエン酸、グルコサミノグリカン、ピロリン酸などは結晶形成を抑制する働きがあることが知られており、これらの物質が減少すると尿石形成に影響を与える可能性があげられています。
これらの中で特に重要な要因としては①②があげられます。
一方でこの2つの要因は対策が今すぐ始められるという点があります。(下の予防策を参照してください)
- 予防策は?
1.飲水量の確保
猫は元々砂漠の生き物と云われており、飲水量が多いほうではありません。
その中で飲水量を増やすということは容易いことではないと思いますが、いくつか考えてみましょう。
・飲み水の設置数を増やす・・・飲み水に遭遇する機会の増加
・飲み水の供給方法の変更・・・ウォーターファウンテンや特殊なボウル(注:急に切り替えると飲まなくなるかもしれないので最初は様子を見ながら切り替えてください)
・水の温度変更・・・人肌位を好む場合もあります(個体差あり)
・給与回数を増やす・・・一日の水分摂取量が増える場合もあります
などなどありますが、ネコちゃんによってどれがいいのか決まっておりません。
また、蛇口から飲むのが好きとか、お風呂場じゃないと飲まないとかその子の好みも多様なので普段の生活している姿からいい飲水方法を考えられるといいかなと思います。
どうしても難しい場合はご飯を缶詰にするとおのずと水分摂取量はあがりますが、嗜好性や給与量の見直し、その子に合ったご飯を選ぶという問題はあります。
2.トイレ環境の改善
トイレを我慢してしまうと尿の停留時間が長くなってしまいます。
また、膀胱炎のリスクもあがりますので、ストレスフリーなトイレ環境が大事です。
猫の排泄問題に詳しいDr.Jacqueline C.Neilson,DVM,DACVBが提唱されている理想的なトイレをご紹介します。
・大型のトイレ
・粘土質で凝固性の砂
・厚さ2~3インチ(約5~7.5㎝)で砂を敷く
・清潔なトイレ・・・少なくとも1日1回は排泄物を取り除き、月1回は全体を取り換えてトイレを洗浄
・近づきやすい場所に置く・・・人通りが多い、うるさい場所は避ける
これらの提言は大半の猫の好みであり、猫によっては個々の好みがあること注意してくださいとのことです。
また、トイレの設置数に関しては飼育頭数+1個が推奨されており、1ヶ所にまとめて置くのではなく複数個所に置くことがすすめられています。
3.ご飯やおやつの見直し
フードによってはその子にとって尿石の形成を助長してしまう場合もあります。
またおやつなどは基本的にミネラル成分に限らず栄養成分に偏りができてしまうので尿石素因のある子に対しては特におすすめしません。
煮干しは一番おすすめしません。
通常の維持食でも尿石のリスクを低減させたものがあります。
但しフードの切り替え時には注意が必要です。↓
缶詰への切り替えや他のフードに切り替える場合は少しずつ混ぜる量を増やしたり、従来のフードの隣に置いたりしながら少量から移行してください。(移行期間の目安はは4~6週間といわれています)
以上尿石症についてまとめてみましたが、予防策を講じてても尿石症を発症してしまうことは普通にあります。
寒くなってきたときには飲水・排尿状態のチェックをより気にかけてもらえるといいと思います。
また、一度尿石症を患ったことがあるネコちゃんに関しては尿石用の療法食を継続されることをおすすめします。
どうしても食べなくなった等の理由があれば給餌方法の見直し(出しっぱなしはおすすめしません)や、他の療法食をチャレンジしてみるといいと思います。様々な種類がありますのでお気軽にご相談ください。