こんにちは獣医師の阿波です。
日本は世界から見ても長寿大国であり、それには食生活や高度な医療技術が背景にあると池上先生のテレビ番組で言っておりました。
日本の平均寿命は83.096才で、世界ランキングでは2位だそうです。1位は香港の83.480才、3位はイタリアの82.937才だとか。(参考:http://top10.sakura.ne.jp/index.html)
イタリアの食生活はピザやパスタのイメージが強いですが^^;魚も結構消費されているのでしょうか…?
日本の犬や猫たちも、平均寿命が延びてきており2014年時点では犬が13.2歳、猫が11.9歳でそれぞれ過去最高であったことが東京農工大と日本小動物獣医師会の大規模調査で明らかにされております。
また、平均寿命は25年間でイヌは1.5倍、ネコは2.3倍に延びたとされており、主な要因としてはワクチン接種による感染症対策が進んだことがあげられています。
(参考:日経新聞https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG14H1M_U6A910C1000000/)
ただ、もっと長生きしてほしいし、まだまだできることはたくさんあると思います。
前回の名前ランキングのコラムでもご紹介しましたが、2017年11月時点でのギネス世界記録に登録されている犬は29歳と160日(1939年に死亡)、猫は38歳と3日(2005年に死亡)となっております。
この子たちから見れば10歳でもまだまだ若い!ということになりますね。
しかしながら、現状としては7歳過ぎたらシニア期といわれており実際様々な病気が顕在化してくる時期でもあります。
腎臓病や心臓病、腫瘍といった病気は高齢になってくるとどうしても増えてきてしまいます。
そこで今回は腎臓病(主に慢性腎不全)を早期に発見し、早期に対策をすることで進行を遅らせもっと長生きしてもらえたらいいなと思い、検査の方法をご紹介させて頂きます。
慢性腎不全の診断には、血液検査(クレアチニンや尿素窒素を含む)・尿検査(尿中蛋白含む)・エコー検査・血圧測定などがあげられます。
しかし、腎臓という臓器は代償機能が高く、代表的な血液検査項目であるクレアチニンなどは腎機能が75%喪失するまで上昇してこないと言われております。
そこで近年IDEXX社から登場したのがSDMA(対称性ジメチルアルギニン)というバイオマーカ(採血必要)です。
このSDMAはほぼ全てが腎臓からの濾過により排泄されるため、糸球体濾過率(GFR)の優れた指標となります。
糸球体濾過率というのは腎臓がうまく機能しているかの指標になります。
そして、このSDMAの特徴はクレアチニンは腎機能が75%喪失するまで上昇しないのに対し、SDMAは腎機能が平均40%喪失した時点で上昇します。
IDEXX社によると猫では平均17か月、犬では9.5か月早く腎機能の低下を発見できる可能性があることが血清クレアチニンとの比較で分かっています。
また、SDMAはクレアチニンのように筋肉量に影響されないため、痩せた犬や猫でもより正確に糸球体濾過率を反映することができます。
この検査を通常の血液検査に追加することによってより早期に腎機能低下を発見することができれば、フードを変更したり定期検査の頻度を増やしたり、サプリメントを開始するなど早めの対策がとれます。
もちろん既にクレアチニンの上昇が認められている場合でも、より詳細なステージ分類や病態の評価ができるのでより正確な治療方法の選択ができます。
このように高齢になってくると、見た目上血液検査に問題がなくてももう少し詳しい検査をすると異常が見つかるケースがあります。
腎機能の低下もそうですが、エコー検査をすると腫瘍が見つかることもあります。
動物は人間の4倍速く年をとると言われています。1年に1回の検査でも、人間に換算すると4年に1回しか検査してないことになります。
定期検査の頻度をもう一度見直してみませんか?
3~4月は春のフィラリア健康検査キャンペーンを実施しており、通常より費用が安くなっておりますので是非この機会にご利用ください。(対象:期間中フィラリア検査と一緒に健康検査をされる方)
SDMAの検査は外注検査になりますので、別途費用がかかるのと結果には数日かかりますのでご了承ください。
※モノリス社の場合、犬はシスタチンCという項目になります。シスタチンCはSDMAとは全く別の物質ですが、15㎏未満の症例ではクレアチニンよりも感度が高く、より早期に腎機能の低下を検出することができます。
気になる方は来院時にご相談ください。お待ちしております。