こんにちは獣医師の阿波です。
ここ連日の猛暑で皆様体調は大丈夫でしょうか?20年前くらいは30℃超えたら猛暑日みたいな感じだったと思うのですが、今は40℃になろうとしています。
最近、室内で熱中症になったという方のお話を聞いましたが、あれっと思ったら頭痛やめまいだるさで動けなくなるようです。室内だからといってけっして安心できませんので、エアコンやこまめな水分補給と適度な塩分補給をおすすめします。
飼い主の皆様も熱中症には十分ご注意ください。
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熱中症に注意! – 熱中症情報 – 日本気象協会 tenki.jp
ここまで暑くなると人間同様、動物たちも熱中症のリスクが高くなりますので、今回は熱中症についてお話します。
熱中症は、高温多湿環境下における高体温および脱水によって生じる全身性の疾患です。
また、熱中症が原因で動物病院を緊急に受診する犬の死亡率は約50%で、死亡例の多くは受診後24時間以内に死亡するといわれています。
熱中症が重度の場合は適切な治療を行っても致死率は高くなります。
症状としては、粘膜のうっ血及び充血、頻脈、パンティング、虚脱、運動失調、嘔吐、下痢、流涎、振戦、意識消失、発作などがあります。
㊟特に意識レベルの低下がある場合はかなり危険な状態です。
人間の重症度分類を参考にすると、
重症度 Ⅰ 現場で対応可能なレベル
めまい・失神
「立ちくらみ」という状態で、脳への血流が瞬間的に不充分になったことを示し、“熱失神”と呼ぶこともあります。
筋肉痛・筋肉の硬直
筋肉の「こむら返り」のことで、その部分の痛みを伴います。発汗に伴う塩分(ナトリウムなど)の欠乏により生じます。
手足のしびれ・気分の不快
重症度 Ⅱ 医療機関の受診が必要なレベル
頭痛・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感
体がぐったりする、力が入らないなどがあり、「いつもと様子が違う」程度のごく軽い意識障害を認めることがあります。
重症度 Ⅲ 入院加療や集中治療が必要なレベル・・・熱射病
Ⅱ度の症状に加え、
意識障害・けいれん・手足の運動障害
呼びかけや刺激への反応がおかしい、体にガクガクとひきつけがある(全身のけいれん)、真直ぐ走れない・歩けないなど。
高体温
体に触ると熱いという感触です。
肝機能異常、腎機能障害、血液凝固障害
(参考:環境省熱中症予防情報サイト)
基本的に熱中症の疑いがある場合には、可能な限り体温測定をして(40.5℃以上危険)、病院にまずご連絡いただき冷却処置を行いながら早めに連れてきてください。
再度お伝えしますが、熱中症が原因で動物病院を緊急に受診する犬の死亡率は約50%にのぼります。
体温が41.6℃を超えるとわずかな時間であっても、細胞のタンパク質および組織変性により損傷が生じます。
体温が43.5℃を超えると数分で死に至る恐れがあります。酵素が変性し、細胞膜の生理機能が破綻して壊滅的な変化が生じます。
高体温による熱損傷は体のあらゆる部位に障害を起こします。
但し、病院にどうしてもすぐ連れてこれない場合もあると思いますので応急処置の例をあげておきますので参考にされてください。
- 意識はっきり
➠症例を風通しの良い場所や冷房が効いた場所に移して水を飲ませる
- 意識レベルの低下(重症度Ⅱ以上で危険な状態が疑われます)
➠体表冷却法:症例を水道水で濡らすか、水で濡らしたタオルで全身を包み扇風機などで風をあてて冷却
体温が高い場合はアイスノンなどをタオルにくるんだりして、凍傷を起こさないように上記の方法と合わせて適度に首や脇・内股の部分を冷やすのもいいでしょう。
その際に冷水や氷、アイスパック等を用いて急速に冷却すると、体表の末梢血管が収縮し、温度の高い血液が体の内部の各臓器へ循環して、伝導や対流によって熱が体表から放散されにくくなる場合があるのでご注意ください。
出来るだけ体温測定はこまめに行い、体温が39℃近くまで下がれば冷却は一旦ストップしていいでしょう。その後も体温測定や状態をしっかりみてください。
残念ながら高体温により受けた体の中の臓器障害の程度は、計り知れない部分がありますので、病院での検査や集中的な治療が必要となります。
熱中症の原因としては
- 高温多湿環境への長時間の暴露
暑い場所や車内で放置は絶対にやめてください。外飼いのワンちゃんは日陰に入れて風通しの良い場所を確保してください。室内飼いの動物達にはクーラーを入れてください。病院ではだいたい25℃設定にしていますが、25~27℃くらいがいいかなと思います。環境やクーラーによっては冷えすぎたり全然冷えなかったりはあると思いますので適宜調節してください。
- 熱放散能の低下・・・短頭種、肥満、大型犬、心疾患、呼吸器疾患
高齢や基礎疾患のある動物たちは環境温度の変化に弱い場合があります。また、パグ・フレンチブルドッグ・ブルドッグ・シーズー・ペキニーズなどの短頭種は熱中症のリスクが高くなります。更に肥満があると余計に熱放散能が低下します。
- 過度の運動
その子にとっての過度の運動になりますので、このくらいは大丈夫だろうではなく状態をみながら無理をしないことをおすすめします。
などがあげられます。
注意点として、
- 扇風機
人間は体中にエクリン腺があって汗が出ますが、犬の場合肉球しか汗をかかないのと、体表が毛でおおわれているため、暑くてパンティングをしているワンちゃんにただ扇風機を付けただけでは、意味がありません。
体を濡らしたり濡れタオルで覆った状態での使用であれば、水が蒸発する際の気化熱により熱を逃がすことが可能になります。
- 散歩
散歩に限らず運動する際もそうですが、基本的に犬は人間より体高が低いですから、地面から放射される熱の影響を受けやすいです。
自分が感じている以上に犬は暑いんだと考えてください。
そしてアスファルトは高温になりますので、肉球が火傷してしまう場合もあります。
今年は全国的に平年より暑い夏になっているようで、世界的に見ても北半球の広い地域に猛暑が訪れているようです。アメリカのカリフォルニア州デスバレーでは7月に52℃が観測されたそうです。
これからが夏本番というのに大変なことになっています。
動物たちの健康状態は飼い主様に委ねられている部分があります。今年の夏は例年以上に注意して熱中症対策をされてください。
それでは皆様に出来るだけ涼しい夏が来ますように^^