こんにちは獣医師の阿波です。
まだまだ暑さが続いておりますが、皆様体調の方は大丈夫でしょうか?
自分の体調の変化というのは自分が感じるものなので、比較的気づきやすいと思います。
では、動物たちの体調の変化ってどうでしょうか?これは動物たちのサインを飼い主様が感じ取って頂くしかないのです。
体調の変化の中でも比較的わかりやすいものとしては、食欲の低下・嘔吐・下痢・痒み・鋭い痛み・出血・脱毛・目が白いなどがあげられます。
慢性的な症状というのは気づきにくいケースがあります。多飲多尿・肥満・削痩・歩様の変化などは定期的に振り返って以前の状態と比較しないと気付きにくいものです。
夏も終わりに近づいている今日この頃、今一度動物たちの体調をチェックしてあげてください。
今回は目が白くなってしまう病気、中でも多くの高齢のワンちゃんが遭遇しやすい白内障に関して書いていきたいと思います。
白内障とは水晶体というレンズの部分が様々な原因により、混濁している状態をいいます。
原因としては遺伝性・続発性・外傷性・代謝性(糖尿病など)・中毒性などがあげられますが、最も多いのは老年性(自然発生性、6歳以上)といって加齢によるものです。
何で年をとるとレンズが白く濁ってしまうのか?
例えていうならば、生卵が目玉焼きなった時に白身が透明から白くなることと似ています。
目玉焼きは熱が加わることによってタンパク質が変性し、白く固まります。
白内障の場合は、水晶体の中にあるクリスタリンというタンパク質が変性を起こして固まった結果、透明度が失われます。
目玉焼きをもとの生卵に戻すことはできません。白内障も変性した水晶体のタンパク質をもとにもどすことはできません。
そのため出来るだけ早い段階で発見してあげて、進行を遅らせてあげることが肝要です。
進行し日常生活に支障をきたすようであれば、手術も視野に入ってきます。
白内障の進行段階は、
段階① 初発白内障・・・水晶体のごく一部に混濁が認められる。肉眼での発見は困難。
段階② 未熟白内障・・・初発より広い範囲での混濁。まだ視覚はあるが次第に低下。
段階③ 成熟白内障・・・水晶体全体が混濁し、視覚消失。初発から数カ月~数年。
段階④ 過熟白内障・・・水晶体内容物が液化し漏出することがあり、ブドウ膜炎・緑内障・水晶体脱臼などの合併症が引き起こされる。
(左上から初発➠未熟➠成熟➠過熟白内障の写真)
初発白内障の時点で発見できればいいですが、肉眼的にわかるのは未熟~になりますので、気になる方は一度ご相談して頂いて眼を詳しくみる必要があります。
また、目が白くなってきたといっても、白内障以外でもパッと見て目が白いなと感じる可能性がある疾患がいくつかあります。
- ブドウ膜炎・・・ブドウ膜(虹彩、毛様体、脈絡膜)が炎症を起こし角膜浮腫で白くなる
- 角膜潰瘍やびらん・・・潰瘍部位の周囲の角膜が浮腫を起こし白くなることがある
- 脂質沈着症・・・角膜に脂質が沈着し一部白くなることがある
- 核硬化症・・・加齢により水晶体核内の水分や可溶性タンパクの減少、不溶性タンパクの増加などにより、核周辺が青白く見えるようになる。視覚を失うことはない
この中で白内障と肉眼で鑑別が難しいのが、核硬化症です。
この核硬化症自体は視力に影響がないのですが、合併して白内障が存在することもあります。
鑑別には視力の検査や、特殊なライトで水晶体を観察したり眼底を覗いてみる必要があります。
早く発見できたとしてもいずれは進行しますが、初期の段階でサプリメントや目薬を始めてあげれば、やってない場合に比べて理論上は進行は遅くなります。
また成熟白内障になれば水晶体起因性ブドウ膜炎のリスクも出てきますし、手術も視野に入れていかないといけないので定期的な目のチェックが必要となります。
まずはその瞳の奥を覗いてみましょう。
全く話はずれますが、当院院長の著書があって題名が「その瞳の奥に」でした。気になる方は病院の待合に置いてありますのでご覧になってください^^
<参考文献>
・小動物眼科学マニュアル(第2版)
・Veterinary Information 2017.No.18
・Veterinary Information 2011.No.1
・犬と猫の老齢介護エキスパートブック