こんにちは獣医師の阿波です。
朝晩の寒さが定着してきましたが、皆様体調の方は大丈夫でしょうか?
昼間に晴れてると気持ちいですが、寒暖の差で風邪ひかないように気をつけてくださいね。
食欲の秋なのでこの時期は旬の食材がたくさんありますし、鍋なんかもおいしい季節になりました。
でももし、自分の口の中に痛ーい口内炎があったらどうでしょうか?食欲もそげちゃうし、元気も出ませんよね。
実は猫にも口内炎とういうものがあります。
今回の話題はいわゆる猫の口内炎です。
人間の口内炎とはイメージが大きく異なります。
(出典:犬と猫の治療ガイド2015)
この猫の口内炎は、歯周病から発生する歯周炎・歯肉炎とは少し病態が異なります。
原因は口腔内細菌やウィルスの関与・免疫反応の異常などが挙げられていますが、確定はされていません。
症状は上の写真のような痛みを伴う、口の中の後ろの方(上あごと下あごのつなぎ目)の粘膜を中心とした、発赤・肉芽組織の増生・潰瘍などがみられ、症状が悪化すると炎症が歯周組織にまで広がることがあります。
お口の痛みが強いので、ドライフードが食べれなくなったり、涎が常に垂れていたりします。食欲が落ちフードを食べても口を痛そうにクチャクチャしたりします。
高齢の子の場合、食欲や飲水量の低下によってかくれていた腎臓病が悪化したり、痩せていき栄養状態が悪くなったりして命に関わることもあります。
この症状なんとかしてあげたいですよね。
治療方法は大きく分けて二つあります。
1.内科治療・・・口腔内清掃、抗生剤、ステロイド剤、免疫抑制剤、消炎鎮痛薬
インターフェロン製剤など
2.外科治療・・・スケーリング、抜歯(全臼歯抜歯、全顎抜歯)
内科治療のメリットは侵襲性が低いことです。この中で最も効果が認められるものはステロイド剤になりますが、一時的な症状の改善は得られるものの薬の効果が減弱してきたり投薬を中止すると、再び症状が悪化することが多いです。
また、ステロイドは副作用の問題もありますので内科治療は単剤で管理することは少なく抗生剤やその他の治療を組み合わせていきます。
一方、外科治療のメリットは改善率が高く、長期的な改善が期待できることです。
但し改善率に関しては、全臼歯抜歯(全ての臼歯を抜歯)と全顎抜歯(全ての歯を抜歯)で違いがあります。全臼歯抜歯では約60%、全顎抜歯では90~95%程度の割合で治療効果が認められるとの報告があります。
しかし、全顎抜歯は侵襲性が大きいこともあり(全臼歯抜歯もそれなりに大きいです)、まず全臼歯抜歯を行い内科治療も併用したうえで経過を判断するという方法があります。
外科治療後はほとんどの場合内科治療を併用する必要があり、特に術後数日間は点滴や栄養の補助が必要です。
数か月間観察し治療の効果が十分でない場合には全顎抜歯を検討します。
実際の症例をご紹介します。
このねこちゃんは口内炎のため口が痛くてドライフードが食べれなくなり、食欲も落ち体重が減少していました。
内科治療の反応性も悪くなってきていたためオーナー様と相談し、全臼歯抜歯を行うこととなりました。
症例写真(全臼歯抜歯)・・・右上顎の臼歯を抜歯し縫合したところ
この子は術後数日してからドライフードが少しずつ食べれるようになり、今は体重も増加して活動性も増加しているとのことです。
症例写真(抜歯後2か月)・・・少し赤みはみられるものの、術前のような強い炎症やただれもなくなっています。
全顎抜歯ではないので、今後症状の悪化に注意しながら経過観察中です。
お口の痛みでお悩みのネコちゃんが近くにいましたらまずは病院にご相談ください。