こんにちは獣医師の阿波です。
夏も終わりが近づき朝晩はだいぶ涼しくなってきましたが雨が多いですね。((+_+))
気温が下がったり気圧の低下などがあると関節が痛むという話をよく聞きますが、何故かご存知でしょうか?
まだ経験していないので本当かどうか分かりませんが、気温が低下すると筋肉がこわばり血流が悪くなることで関節の痛みが増すと言われています。
(参考:http://www.itokukai.or.jp/column/disease/post-2760/)
ただ、血流が悪くなると何で痛みが増加するのかまでしっかり説明されているものをあまり見たことがないような…勝手な想像ですが炎症性サイトカインなどの物質が組織に留まる時間が長くなるのかもしれません。
気圧の低下は交感神経の興奮を起こし自律神経の乱れを引き起こすそうです。こちらはどちらかというとめまいや頭痛と関係しているそうです。
(参考:https://www.asahi.com/articles/ASL6Q5170L6QUBQU00X.html)
これらの現象は組織や細胞レベルで変化が起き痛みが発生しているということには間違いなさそうです。
こういった現象は年齢と共に出てきやすくなりますよね。
それとは反対に若いワンちゃん(特に小型犬)で時折発生する関節の痛みもあります。
今回は一度名前を聞いたら忘れられない、もしくは何度聞いても覚えられないような名前の病気をご紹介させて頂きます。
その名はレッグ・カルベ・ペルテス病(゚д゚)!英語でLegg‐Calve‐Perthes disease!
大腿骨頭壊死症ともいわれています。
大腿骨の頭の部分辺りが変性し股関節の虚脱や関節炎を引き起こします。
トイ種やテリア種は最も発症しやすく、本症は遺伝的素因が存在する可能性があるといわれています。
原因は不明ですが,大腿骨頭に血液を供給する関節包の中や,滑膜下の血管のタンポナーデが病的変化を引き起こす虚血の原因として示唆されています。
大腿骨の頭の部分への血液供給が悪くなるということですね。(´ー`*)ウンウン
症例の多くは5~8カ月齢で,1歳前後でもみられます。
足のケンケンが通常2―3カ月にわたって徐々に発現します。多くは片方の足だけですが、まれに両足にみられることもあります。
症状が進行すると軟骨下骨の壊死によって,大腿骨頭の弛緩や変形が起こってきます。関節軟骨にも障害が及ぶので、関節軟骨が分厚く肥厚してきます。
この病気は残念ながら軟骨保護薬(硫酸化グルコサミノグリカン、グルコサミン、コンドロイチンなど)は,病状が進行している場合にはほとんど効果がないといわれています。
また、内科的な治療の場合の反応は悪く、25%の犬において2~3カ月後のケンケンが少し良くなったよというレベルです。
一方で手術(大腿骨頭切除術)を行った場合には,回復の予後は良好です(成功率は84―100%)。
下のレントゲンは右足の大腿骨頭壊死症のワンちゃんになります。
大腿骨頭を切除することにより関節の痛みはなくなりますが、当然術後の侵襲により一定期間は痛みが発生しますし、大腿骨頭がなくなった股関節に線維組織などで関節様の構造が出来上がるまでは機能的な障害が出てしまいます。
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そのため患肢のリハビリテーションは極めて重要で、一般的に手術を実施した場合は術後の回復には3~6ヵ月はかかると言われています。
また、多くの症例は症状が少しずつ進行してくるので病院に来た時には患肢の負重が弱くなっているために、筋肉が萎縮してしまっている場合が多いので余計に回復が悪くなることがあります。
ただし、うまくリハビリできれば1~2か月ほどで正常に近いくらいの歩行ができる場合もあります。
この子のように針治療や低周波マッサージで筋肉の血流をよくしたり動かしてあげることもあります。
日本では小型犬を飼われている方の方が多く、特にトイプードルは人気犬種でもあります。
関節の痛みは高齢なってからだけではなく、若いうちから起こってしまう病気もありますので若いからと油断なさらず気になる症状があれば早めにご相談ください(‘ω’)ノ