こんにちは獣医師の阿波です。
今年も気づけば残すところ1ヵ月を切りました。思い返すと本当にあっという間ですね。
この1年を振り返り当院を受診された動物たちの疾患で最も多いのは皮膚症状および耳の症状です。人間であれば皮膚科と耳鼻科は別ですが、わんちゃんやねこちゃんの場合耳の症状の多くは皮膚の状態とも関連していることが多いのです。
外耳炎は繰り返すことが多いと思われる方が多いとは思いますが、それには理由があります。
外耳炎を起こさない子は耳のお手入れをしなくても問題ないケースがほとんどです。本来は耳の自浄作用で蓄積した耳垢も外に排出されます。
ではなぜ、耳垢がたまりカビやバイ菌が増殖し、外耳炎が起こってしまうのか?
その背景にはアレルギー(アトピー、食物アレルギー)が関与していることがあります。
もちろん他の原因、ホルモンの病気であるとか、皮膚の脂漏症であると外部寄生虫も主な原因として可能性はあります。
ただ、圧倒的に多いのがアレルギーになります。いわゆるアトピー性外耳炎の症状が実はすごく多いのです。
慢性外耳炎の症例の75%が犬のアトピー性皮膚炎に関連しているという報告や、犬のアトピー性皮膚炎症例の83%で外耳炎の既往歴があったという報告があります。
犬アトピー性皮膚炎は、遺伝的素因を背景とした慢性掻痒性皮膚疾患であり、特徴的な臨床症状を呈し、その多くが環境アレルゲンに対するIgEの増加を認めると定義されています。
やや小難しいですが、いわゆる慢性的な痒みがあれば可能性があります。
痒みの原因はたくさんありますが、解説はコチラ↓
皮膚が痒い、赤い、アレルギー?
アトピー性皮膚炎の従来の治療法は大きく3つに分類されます。
①内服薬
②外用薬
③皮膚のバリア機能の改善(シャンプー、保湿剤、サプリなど)
この3つを組み合わせて総合的に治療していくことになります。内服薬も現在は効果が高く副作用の少ないものがありますので、食事のコントロールや皮膚のバリア機能の改善がしっかりできれば概ね痒みは落ち着きますし、炎症も緩和されていきます。
症状は全くゼロというのは現実的に難しく、症状が緩和した状態を治療しながらうまく維持していくとういのがアトピーの治療の目標になります。
一方で内服薬の投薬が大変だとか、更なる症状の緩和が望まれるケースもあります。
また、まだ皮膚のダメージの程度が軽症の場合で内服薬は難しいという方は近々発売されるサイトポイントという注射薬がいいかもしれません(゚д゚)!
いいかも…というのは欧米では既に使用されているのですが、本邦では初の抗体薬になりますので実際にまだ日本での使用例がないためです。
このサイトポイントというお薬は1回の注射で約1か月間犬アトピー性皮膚炎による痒みの症状を緩和します。
アトピー性皮膚炎では皮膚のバリア機能が低下しているので、そこからアレルゲンが侵入し体の中のアレルギー反応に関わる細胞に作用していきます。
サイトポイントはその過程で痒みを発生させる伝達物質となる特定のサイトカインをブロックしていきます。
人間においてもアトピー性皮膚炎の治療の選択肢として近年抗体薬が注目されています。
医科領域ではデュピクセントという抗体薬が使用されています。
適応は既存の治療で効果が不十分なアトピー性皮膚炎なっていますが、わんちゃんでは投薬が難しいというのも一つの適応基準になると思います。
以上新薬のご紹介をさせていただきましたが、少しでも痒みから解放されるわんちゃんが増えるといいですね。
この薬はねこちゃんには使用できませんのでご了承ください(m´・ω・`)m ゴメン…
12月は皆様慌ただしいとは思いますが、交通事故など十分にお気を付けてよいお年をお迎えください。