1月の寒い日、昨日から立てなくなった山羊が軽トラックに乗せられて、病院にやって来ました。
体重は34kg,背骨や肋骨が浮き出ていて、痩せて元気が有りません。触ってみて足の骨折とかは無いようだし、泡も吹いていないので中毒でも無いようです。便もコロコロした山羊独特の豆状の便が出ていますが、念のため便検査をしましたが、線虫は僅かしかいませんでした。
血液検査では重度の貧血と低コレステロールが認められ、痩せていることから、栄養不足によって起立不能になったものと思われました。話を聞くと、事情があって、他所に山羊を預けていたそうで、そこで餌が少なかったようですね。
その日は病院で点滴などの治療をして帰りましたが、寒くない様に小屋の中に入れること、稲わらなどの敷料を敷くこと、寝返りをさせたり足をマッサージすること、栄養のある餌を与えることなどをお願いしました。
5日後、今度は往診しました。感心したのは、綺麗な小屋の中に山羊がいて、寒くない様にしていて、山羊のお腹の下にちゃんと敷料がしいてありました。ただ、まだ起立不能のままで、食べてはいますが、量は少なく元気も無いようです。しかも自分で寝返りも出来ないようですね。
再度、点滴をして、お灸を据えることと、山羊の体を吊り上げることを提案しました。お灸は起立不能の時に使うツボや、味噌を使ってもぐさが落ちないようにすること等を詳しく説明し、吊り上げる時はドンゴロス(麻布袋)で山羊のお腹を支えて、小屋の天井から吊り上げるように説明しました。
うれしい事に、これらの事を飼い主さんはきちんとやってくれたんですよ。その結果、初診から10日めには自力で起立し、歩行可能となりました。
飼い主さんが、山羊が寝起きする環境をきちんと整えてくれたこと、看護をしっかりやって頂いたことが、病気を治す原動力になったと思います。私達、獣医師だけでは病気を治すことは出来ません。飼い主さんが、動物を良く観察したり、薬を飲ませたり、リハビリなどをしてあげることによって、治癒に至るんじゃないかと思っています。


